12月 21 2009
遺産の預金を払い戻したい
亡くなった方が金融機関の口座に預金をしていた場合、この預金も遺産の一部となり相続人が権利を持つことになります。
相続人が故人の預金を払い戻そうとする場合には、通常、相続人全員で払戻用の書類に署名押印することが必要です。しかし相続人間で遺産分割方法について争いがあるなど、全員協力して払戻手続を進めることができない場合には、金融機関も一部の相続人による預金の分割払戻に応じないことが多いため、トラブルになることがあります。
銀行の側からすると、個々の相続人からの払い戻し請求に応じてしまうと、あとで他の相続人から既に払戻した部分まで二重に請求をされたり、双方の主張に巻き込まれて混乱する危険性が無いとは言えませんから、それを理由に全員の署名と実印を要求してくるわけです。
この点、判例は、相続が起こった場合の預金払戻請求権は、遺言などによって別途の遺産分割方法が定められていない限り、法定相続分に応じて当然に分割されるとされています(東地H8.2.23等)。
例えば亡くなった夫の預金が100万円で法定相続人が妻とその子2人なら、遺産分割協議など別途の手続を経ることなく、当然に妻が50万円、子がそれぞれ25万円の預金払戻請求権を金融機関に対して有するという考え方です。
もっとも、こうした判例の立場を金融機関に主張したところで、素直に預金が払い戻されることは通常期待できないため、実際には裁判を起こして回収していくことが多くなります。金融機関ごとに対応が異なりますが、判決を実際に得た上で払戻を請求していく場合のほか、裁判の途中で和解して払戻を受けることもありますからケースバイケースです。ただ、預金契約の内容いかんによっては、裁判をしても払戻を命じる判決が見込めないようなケースもありますから事前に注意が必要です。
以上のように亡くなった方名義の預金について払戻請求を行うためには、裁判手続やその前提となる戸籍調査、また金融期間ごとに異なる個別の対応など、やや複雑な手続が必要となってきます。当事務所では、こうした手続を全てまとめてお手伝いすことが可能となっておりますので、まずはご相談頂ければと思います。