愛知県名古屋市の弁護士 交通事故・離婚など、お困りの際には名古屋駅前の法律相談をご利用下さい。

清水綜合法律事務所 Shimizu Law Office
清水綜合法律事務所 コラム

過去の記事 2011年 2月

2月 22 2011

遺産の預金を払い戻したい②

銀行預金は、遺産を構成する基本的な項目の一つです。

遺産の分割方法について、法定相続人間で折り合いがつかない場合には、家庭裁判所での遺産分割調停という手段もなかなか便利ですよ、というお話を以前に書きました。(「遺産分割調停とは?」)。
調停において、預金の分割方法も含めて相続人全員の意見が折り合えば、その合意内容通りに裁判所が調停調書を作成しますから、その調停調書を金融機関に持っていけば、有効な遺産分割協議書を提出した場合と同様に、預金の払戻手続を進めることができます。

では、調停を何回やっても、最後まで相続人間の意見が折り合わなかった場合はどうなるでしょうか。

遺産分割調停が不成立となった場合、最終的には裁判所が審判によって強制的に遺産の分割を実施します。不動産や証券などの遺産は、裁判所が各種の事情を考慮して、誰に何を相続させるかということまで取り決めますが、ここで預金と他の相続財産は扱いが異なってきます。

預金(の払戻請求権)が複数の相続人に相続された場合について判例は、一貫して当然分割説に立っています(東地H8.2.23等)。これは特段の遺産分割手続を経ず、各相続人が当然に、法定相続分に応じた預金払戻請求権を分割取得するという立場です。
例えば、被相続人が父で100万円の預金があった場合、その妻と子2人は法定相続分に従って、妻が50万円、子が1人あたり25万円ずつの預金払戻請求権を、銀行に対して当然に有しているという考え方です。

このように、預金払戻請求権は当然に分割されているというのが裁判所の基本的な立場ですから、相続人間でどうやっても預金の分割方針に折り合いがつかない場合、調停や審判など、家庭裁判所の遺産分割手続を利用した払戻は、原則的には出来ないと考えることになります。

一方、銀行などの金融機関は法定相続人全員の実印をついた遺産分割協議書など所定の書類がなければ、一部の相続人による払戻請求には応じないことが一般的ですから、相続財産のうち預金だけが塩漬けになってしまう可能性もあるのです。

こうした場合にどうするかですが、ともかく預金払戻手続という部分だけでも、相続人が全員協力して進めることができれば一番よいと思います。ただ実際には、払い戻された現金を前にまた紛争が再燃してしまう危険もありますから、相続人間で最後まで話をまとめることはハードルが高いかもしれません。

次に、各相続人が裁判によって、自らの法定相続分に応じた払戻を金融機関に対して請求していくといいう手段があります(コラム「遺産の預金を払い戻したい」参照)。この方法は他の相続人と関係なく進められるほか、弁護士が代理人として全ての手続を行うことが可能ですから、ご本人のストレスなども少なく済むのが利点です。

相続財産の基本的な内容の一つでありながら、このように預金は他の遺産と扱いが異なる部分がありますから、ご留意頂ければと思います。

カテゴリー:相続・遺言

copyright © 2007 Shimizu Law Office. All Rights Reserved. 運営:清水 加奈美