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清水綜合法律事務所 Shimizu Law Office
清水綜合法律事務所 コラム

カテゴリー 日々の雑感

6月 17 2013

成年後見人の業務

一旦選任された成年後見人は、当面問題となっている「特定の業務」が終われば業務終了というものではありません。たとえば、成年後見人が選任された時点で遺産分割や裁判、相続放棄の問題などを解決する必要があった場合、それらの問題が解決したとしても、成年後見人はご本人の財産を適切に管理することでご本人を保護・支援するために選任されたのであって、保護・支援の必要がある以上、成年後見人の職務が終了するわけではないのです。
原則的に成年後見人の職務は、本人の判断能力が回復するなど、その必要がなくなった場合あるいは、本人が死亡するまで継続します。成年後見人を辞任するためには、家庭裁判所の許可が必要で、自由に辞任できるものではありません。

このように成年後見人は、あまり気軽に引き受けるという業務ではありませんから、この点は一応注意しておいてください。
ご親族であったとしても、長期間責任を持って業務を続行し、定期的に裁判所への報告を行うという後見業務の具体的内容について不安があるという場合、最初から弁護士などの専門家に後見業務を任せることが適切な場合もあるかと思います。

成年後見人を誰にするかの判断は、諸般の事情を考慮して裁判所が決定することではありますが、成年後見人の「候補者」として、親族の方が立候補すること自体は可能となっていますから、こうした点も念頭の上で、どのような内容で成年後見開始の申立をするかを十分検討していただければと思います。

当事務所では、成年後見人の選任の申立に関するお手伝いも行っております。
個別のご事業を弁護士がお聞きした上で、考え得る選択肢や注意事項などについてご説明を差し上げておりますので、まずは法律相談をお申込ください。

10月 30 2009

被疑者国選弁護の対象事件が拡張されました

1 被疑者段階での国選弁護制度
2006年よりスタートした新しい国選弁護制度について、2009年5月21日から対象事件が拡張されました。
これまで、被疑者段階の国選弁護は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しく は禁固にあたる事件などの重大事件(殺人・強盗など)に限られていましたが、今回の拡張により長期3年を超える懲役若しくは禁固にあたる事件(窃盗や傷害、詐欺など)についても対象とされるようになっています。

2 制度の変遷
2006年10月以前は、起訴されて被告人となった段階でなければ国選弁護人をつけることができなかったので、逮捕・勾留された公訴提起前の被疑者は当番弁護士制度を利用して、無料で弁護士から法的アドバイスを受けることができるようになっていました。ただ、当番弁護士の面会は1回きりですから、その後も引き続いて起訴前の弁護活動を希望する場合には、私選弁護人としての依頼・契約が個別に必要という状況でした。
2004年5月21日に成立・公布された「刑事訴訟法の一部を改正する法律」により、2006年から被疑者段階から国選弁護人をつけることが可能となり、今回その範囲がさらに拡張されてきたという経緯となります。

3 現場の対応
被疑者国選弁護の対象が窃盗事件や傷害事件にまで拡張されたことにより、案件数が一気に増加して弁護士が不足する可能性については従前から懸念されていました。愛知県弁護士会内でも今年は被疑者国選弁護人名簿への登載がかなりアナウンスされており、準備の甲斐あってか大きな混乱はなかったように聞いていますが、それでもまだ慢性的に人手が足りない状況のようです。
私も、微力ながら貢献できることがあればと被疑者国選弁護人としての活動を現在行っています。

4 弁護人としての進め方
基本的な制度自体は、従来の国選弁護人と大きな変化はありません。指定日に事務所で待機していると法テラスから連絡が入るので、被疑者が勾留されている警察署や拘置所まで接見に出向くことから被疑者国選弁護が始まります。

もし起訴されてしまうと、本人や家族にとって社会的・精神的な負担が非常に大きくなってしまいますから、起訴前に示談交渉・被害弁償などをとりまとめ、不起訴になるよう努力することが起訴前の弁護活動においては大変重要な業務となってきます。

もっとも案件の中には、示談や被害弁償を実施したくても資力面で難しいなど、望ましい方針で業務を進めることが難しいケースも一定程度あると思われます。とはいえ被害弁償などを行わない(行えない)場合でも、話し相手になったり被疑者家族との連絡窓口になるだけでなく、不当な取調べ・調書作成などが行われないように捜査過程をよく聞き出しておくことが、適切な弁護活動のために必要と考えています。

5 その他雑感
被疑者が起訴されて被告人となった場合、被疑者国選弁護人はそのまま被告人国選弁護人となりますが、弁護報酬は算定方式がそれぞれ異なっており別個に算出されます。
被疑者段階では「接見回数」を基本的指標としつつ、示談成立の場合などに加算される 方式、被告人段階では「公判回数」を基本的指標としつつ、保釈や和解があった場合などに加算される方式となっており、被告人弁護に関して接見報酬は出ないことになっています。
何をもって業務遂行と見るかの考え方は様々と思いますが、別件で再勾留されたという ので接見に行ったところ、速やかに追起訴されてしまっており、再勾留分についての被疑者国選報酬がゼロだったということがありました。こうした被疑者・被告人に関する情報伝達も、もっとスムーズになっていけばより良いと思います。
逮捕段階の被疑者や、長期3年以下の懲役もしくは禁錮に当たる罪で勾留されている被疑者など、いまだ一部対象外の部分があるという課題も残されてはおりますが、まずは担当事件について被疑者・被告人の権利が十分守られ、最善の弁護活動となるようにと心がけつつ日々努めております。

カテゴリー:日々の雑感

5月 20 2009

交通事故損害における諸問題

 1 平成20年度中の交通事故発生状況

警察庁交通局から、平成20年度中の交通事故発生状況が発表されました。
死者数は8年連続の減少、交通事故発生件数および負傷者数も4年連続で減少と、全体的には改善傾向となっています。シートベルトやチャイルドシートの義務化、飲酒運転の厳罰化など、交通事故の被害防止に向けた対応の成果と評価できるでしょうか。
しかしながら当事務所の位置する愛知県について見ると、交通事故死亡者数は前年に引き続いて全国ワースト一位(276人)となってしまいました。東京都(218人)や大阪府(198人)より多いばかりか、北海道全域(228人)や四国全域(242人)よりも多いという、大変に不名誉な惨状であります。

 

2 交通事故被害における弁護士の役割

当事務所は、交通事故案件に関しては専ら被害者側の代理人です。交通事故による死亡事故事例や後遺障害事例について、被害者に支払われる損害賠償額の増額を目指して交渉・訴訟を行うことが業務の中心となっています。
こうした業務がなぜ必要になるかというと、端的に言えば加害者側保険会社から提示される示談金の額が低いためです。そもそも保険会社側と裁判実務では交通事故損害の算定基準が異なっているため、弁護士の視点からは特に争点らしき事情が見られないケースでも、相当に低い示談金提示となっていることがあります。
もっとも、当事者間でスムーズに示談成立へ至る場合も一定割合あると思われますから、弁護士への相談・依頼まで発展するようなケースでは、金銭的な問題だけではなく、被害者が、加害者や加害者側損保への不信・不満を抱いている場合が多いように感じています。
加害者側損保も社内基準に従って粛々と業務を行っているはずなのですが、実際には案件や担当者ごとに方針が一定せず、過失割合や逸失利益などに関して必ずしも論理的とは思われない主張に固執してくるような場合も見られます。そうした案件では当然ながら示談も難航しますし被害者側のストレスも大きくなりますから、弁護士が代理人として窓口になったほうがよいケースも多くなるでしょう。

 

3 交通事故損害賠償債務は破産免責されるか

加害者がそもそも任意保険に加入しておらず、自賠責からの賠償や、自己加入損保からの支払いしか受けることができないというケースも散見されます。こうした場合には加害者本人に対して不足額の支払請求をするほかありませんが、任意保険に加入していないような加害者は経済的に困窮した状態にあることも珍しくないため、そのまま自己破産などをされてしまうと大変困ったことになります。
破産法上の非免責債権とされ支払義務が残るものの一つに「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条1項2号)」「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(同3号)」がありますが、交通事故による損害賠償債務は、これらに該当して免責対象から除外されるのでしょうか。
非免責債権の範囲は、条項により必ずしも明確でない場合もありますが、「悪意で加えた不法行為(2号)」とは、例えば害意による暴行などを指す趣旨ですし、「重大な過失(3号)」とは、暴走行為のように違反の程度が著しいものを指すと思われますので、ケースバイケースではあるものの免責確定後の請求というものは難しい場合が多いのではないかと考えています。

なお今年3月13日に広島地裁にて、任意保険に加入していなかった交通事故損害賠償債務の一部を、年額12万円ずつ20年間かけて支払うとの和解が成立し「自己破産 免責認めず」などと報道されていましたが、これはあくまで「和解(両者の譲歩による合意)」であって、交通事故によって生じた損害賠償債務の免責を裁判所が否定したケースではないことに注意する必要があると思います。

 

4 金銭賠償で解決できない問題について

死亡事故における遺族の悲しみはもちろんのことですが、命が助かった場合でも完治せず後遺障害が残ってしまうなど、交通事故によって被害者やその身内は心身に深い傷を負うことになります。その後の生活スタイルも、事故前とは違ったものになってしまう場合が多々あるのではないでしょうか。こうした苦しみや不自由を、全て金銭に置き換えて評価するという解決方法自体に、もともと難しい部分はあるわけです。
弁護士の業務は損害賠償金の増額という金銭的解決を主眼としてはおりますが、そうした機会を生活再建に向けたきっかけの一つとして受け止めてもらえるよう、依頼者とよく話し合いながら進めることが大変重要だと考えています。

 

5 今後に向けて

冒頭データのとおり国内の交通事故件数は減少傾向にありますが、一定数の事故発生は日々止むことなく続いています。また交通事故というものは、例えば信号停車中の追突など、自分の側で注意していても回避できない場合があるという点も難しい部分です。誰もが当事者になる可能性のある問題として、今後も交通事故を減少させるための社会政策を進めていく必要があるでしょう。
今年1月にはあいおい損保・ニッセイ同和損保・三井住友海上の経営統合が発表され、3月には日本興亜損保と損保ジャパンの経営統合が発表されるなど、損保業界の再編成も目まぐるしい速さで進んでいます。交通事故の被害者や遺族が、事故後の治療や生活の再建に困窮することのないような保険制度が整えられていくように願うばかりです。

カテゴリー:日々の雑感

3月 23 2009

離婚事件と弁護士の役割

■家事事件と離婚
当事務所では特に取扱事件の類型を限定せず、市民からの様々な相談を日々頂いておりますが、一般的な地域の法律事務所と同様、離婚や相続など家事関係の法律相談・依頼は一定の割合を占めています。

新人の弁護士や司法修習生と話をしていると、これから専門化していきたい取扱分野として家事関係や離婚を挙げる方は正直あまりおらず、人気があるとは言い難い分野かなとは思ってはいますが、これはこれで中々奥の深いものです。

 

■データから見る離婚問題の現状
厚生労働省の人口動態調査によると、平成17年度~平成19年度の離婚総数は、前年度比で順番に-3.3%(8887組減少)、-1.7%(4442組減少)、-1.0%(2643組減少)と続いており年々減少傾向にあります。

一方、裁判所に持ち込まれる離婚問題の件数は逆に増加傾向にあり、離婚訴訟の終局事件数は平成17年度~平成19年度では、前年度比で順番に+109%(4021件増加)、+21%(1642件増加)、+2.9%(271件増加)となっているほか、離婚調停の成立数も現状維持ないし増加傾向といえる状況になっています。(文末資料参照)

離婚総数自体が減少しているにもかかわらず、婚姻関係上の問題について裁判所を介して解決しようと考える人々が増加している背景には、価値観の多様化や、司法制度の活用が市民の間に浸透してきたこと等が考えられるでしょうか。当事務所の実感としても、離婚に関する悩みごとに関しては日々絶えることなく相談を頂くような状態であり、いつの世にも変わらず存在する人の悩みであるなあと思ったりしております。

 

■問題化しやすい類型
離婚に関する法律相談の中でもよく問題になり、受任しても解決が難航しがちな展開としても挙げられるのが、住宅ローンの残った不動産が夫婦共有財産となっているというケースです。

昨今は不動産の価格が高いわりに平均的な所得はさほど増加しておらず、サラリーマンの夫一人では住宅ローンの負担を支えきれなくなっている世帯が増えているように思います。そこで住宅購入の際には妻の両親が資金援助をした結果、不動産が夫婦共有名義になっているというようなケースも増えているのではないでしょうか。

こうした夫婦が離婚しようとした場合、夫婦双方が不動産の処遇に関してそれなりの意見やこだわり、発言権を持ってきますから、多額のローンが残った不動産の扱いについての方針が一致せず、売ることもローンを払うための金策を進めることもできないまま膠着状態に陥る場合が見られるのです。

また住宅ローンを組む際には連帯保証人がつきものですが、妻が住宅ローンの連帯保証人になっていたりすると、離婚しようとしても保証人の切り替えを金融機関に了承してもらうことが難しいなど、問題がさらにややこしくなってきます。さらに、妻の両親との二世帯住宅を、妻の父と夫が連帯債務者となって購入した場合などには、妻の両親も巻き込む複雑な問題となり、解決には大変な労力と時間を要することもあります。

このように、ともかく夫婦共有財産の中に不動産があるケースというものは協議が難航しがちで、どう進めるか頭の痛い状況がしばしばあるわけです。

 

■離婚事件というものの難しさと意義
不動産の問題以外にも、慰謝料や財産分与はもちろんのこと、子がいれば親権や養育費の問題が生じますし、離婚は調停前置ですから判決まで争えば解決までの時間も1年では済まないことも珍しくありません。離婚事件というものが、家事事件の中でもやや敬遠される傾向があるのは、このように多方面の調整をしなければならない弁護士側の負担が非常に重いということも一因といえるでしょう。

ただ、離婚や不動産の処分をめぐって先述のような夫婦間の膠着状態が生じてしまいますと、もはや当事者間だけで解決することは事実上不可能ではないかなと思います。感情的になってしまいがちな当事者をサポートしつつ、ともかく話を前に進めるためには、弁護士が果たす役割というものが大変に重要となってくるのです。根気よく依頼者と相手の話を聞きながら地道に交渉や期日を重ねることで、苦しみながらも解決の道筋というものが生まれてくるものと経験上感じています。

いつの世にも変わらず存在する人の悩み、と表現しましたが、離婚というものは常にニーズのある法的問題の一つであり、専門家の適切なサポートがより良い結果をもたらすことのできる分野でもあると思っています。無事に解決した後で、依頼者からその後の状況報告などを頂いたりした時には何とも嬉しい気持ちになるものです。

私にとってもまだまだ工夫の余地はありますが、案件担当中は依頼者とともに悩んだり怒ったりしつつ、依頼者にとって有意義な人生の再スタートとなるよう、試行錯誤しつつ日々努めております。
(新日本法規出版㈱ Legal Information Mail Magazine(LIMM)リーガルコラム2008年12月掲載)

 

○離婚総数(厚生労働省人口動態調査)
平成17年度 26万1917組:前年度比-3.3%(8887組減少)
平成18年度 25万7475組:前年度比-1.7%(4442組減少)
平成19年度 25万4832組:前年度比-1.0%(2643組減少)

○離婚訴訟の終局件数(最高裁判所統計。認容、却下、和解等を含む件数)
平成17年度 7680件:前年度比+109%(4021件増加)
平成18年度 9322件:前年度比+21.4%(1642件増加)
平成19年度 9593件:前年度比+2.9%(271件増加)

○調停成立数(最高裁判所統計。調停離婚、婚姻継続等を含む件数)
平成17年度 2万9871件:前年度比-2.1%(649件減少)
平成18年度 3万0178件:前年度比+1.0%(307件増加)
平成19年度 3万1625件:前年度比+4.8%(1447件増加)

カテゴリー:日々の雑感

1月 21 2009

弁護士大増員時代の今後

1 弁護士増員政策の現状

司法試験合格者の大量増員に向けた2002年の閣議決定から既に7年。2007年度から既に、新司法試験を通過したロースクール卒業生が新規登録弁護士として世に輩出され始めています。

現在はいわゆる旧試験と新試験が並存する過渡期にあり、法曹資格を得るための司法研修所修了試験(いわゆる二回試験)は旧試験合格者が例年9月頃、新試験合格者が11月頃にそれぞれ実施されています。また旧試験は2011年の終了へ向けて合格者数が減少していく一方、新試験を中心とする全体の合格者数は年々増員しながら、2010年頃には年間3000人程度まで増える予定です。

弁護士会の会合など、地域の弁護士が一同に会する場では、弁護士登録年度ごとにある程度集合した状態となりますが、愛知県では60期代の一群が出席者全体の半数近くまで迫るほどの比率となっており、58期の私でさえ実際目の当たりにすると少々面食らう部分もあります。この状態から今後さらに増員ペースが加速するわけですから、これから一体どうなるのかという困惑の声が上がるのも無理のないことです。

愛知県でも2,3年前頃から既に就職難が叫ばれており、弁護士会も地域の法律事務所を対象とした採用調査を何度も実施するなど、地域を挙げて増員問題への対応を進めています。

 

2 実際の採用現場から

当事務所でも現在、新規登録弁護士を対象とした採用活動を行っていますが、東海地域だけでなく、九州や北海道といった遠方から面接に訪れる方もあり、募集者が多い都市部における競争の厳しさ、募集枠の少ない地方における就職活動の困難さ、双方を感じさせる現状となっています。

面接後に簡単な食事をしつつ希望分野や現在の修習状況などを話していると、自分の就職活動時代を思い出して少し懐かしくなるものです。聞きなれない”ソクドク”という単語を何度か耳にしましたが、いずれの事務所にも就職せず、自宅などを弁護士登録地として”即独立”することなのだそうです。実際、近隣でもソクドク予定者の噂を耳にしますから、情勢は確かに厳しい局面を迎えているのでしょう。

ただ実際に面接を行い何人もの修習生と話していると、就職難とはいいながらも様々な方がいることに気づきます。

意欲に燃えたフレッシュな姿勢や鋭い質問を前に、こちらも負けてはいられないと気が引き締まる貴重な時間も多々ある一方、面接に遅刻欠席する、名刺も持たずにやってくる、食事に連れて行くと会話もせず食べてばかりであるなど、ちょっとした事務所見学気分のまま就職活動に臨んでいる方が散見されることも事実です。

 これは、他人はともかく自分だけは就職できるだろうという自信の表れなのでしょうか、あるいは無理ならソクドクすればいいと覚悟を決めている故なのでしょうか。心境は計りかねますが、増員時代を迎えた巷の緊張感とは裏腹に、現場の新人は各々かなりマイペースでやっているようにも見え、微妙な温度差を感じる昨今です。

 

3 弁護士という職業について

増員ペースがこのまま維持されるのか減速することになるのか、現在のところ不透明な状態ではありますが、法曹人口の増員という方向性自体は変わらず、争点は主に増員ペースの問題と思われます。いずれにしろ、法曹資格を取ったからといって就職できる保証もない時代は、間もなく到来することになるでしょう。

とはいえ、もとより私も司法試験に挑戦する段階から合格の保証など無かったですし、こうして独立開業している現在でも来年の生計が立つ保証などは無く、毎日が不安なものです。

弁護士という仕事は、自らの言葉と行動で依頼者の信頼を勝ち取り、自らの腕で食べていく職種ですから、保証など最初から最後まで在りはしないのだと私は思っています。新たに弁護士を目指し挑戦する方も、最低限そういったことを覚悟しておく必要はあるかと思います。

 

4 弁護士大増員時代の今後

日々の法律相談をしていると、弁護士というものが市民にとってまだまだ敷居の高い、気軽に相談できない存在であることをしばしば感じます。今後の弁護士増員によって、市民に身近な司法というものが実現されていくとすれば、これまで埋もれていた法的紛争が、弁護士を介した解決の場に現われてくるようになるのかもしれませんね。

事務所を経営する立場としては、これまでの顧客層だけでなく、そうした新しいニーズにも柔軟に対応できるような体制の構築を目指して、日々地道に努力するほかないと考えています。

私は同期弁護士の中では相当早めの独立開業であったため、開業に際しては同期の面々から「本当に大丈夫なのか」などと心配されたりもしましたが、幸いにも多くのご相談を頂きながら、毎日必死にやってきて間もなく2年が経とうとしています。

ご依頼を頂いた案件にはそれぞれ独自の問題があり、常にケースバイケースの判断が求められますから、あまり詳しくない分野の知識が必要となる機会もあります。そうした場合には、地域の先輩弁護士に相談したり、税理士・司法書士など他の専門家と協力したり、必要があれば現地に直接出向いて調査や聴取を重ねたり、なによりも依頼者とよく話し合うなどしながら、ともかく慎重に業務を進めるよう心がけてきました。最近では元依頼者が別件で再び相談をしてくれたり、知人の困りごとを紹介してくれたりと、少しずつ地域の信頼を得られてきた手応えが感じられ、なによりも嬉しく思っています。

こうして少しずつ前進しながら、これからの競争を生き抜いていくしかないのでしょう。また、こういった競争は決して、法曹全体の質を貶めるものではないと信じています。

 “変化を受け入れ、自らの力としていく意欲と柔軟性のある方を求めます。”

就職希望の新人弁護士へ向けて募集要項に記載した言葉ですが、自らに対しても問い続けたい課題であると考えています。

 (新日本法規出版㈱ Legal Information Mail Magazine(LIMM)リーガルコラム2008年9月掲載原稿に修正加筆)

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