6月
02
2009
開業に際してのテナント探しは、楽しくもあり悩ましくもある問題です。
業界では一つの目安として「弁護士の人数×5坪+10坪」と言われたりもするようですが、これによると弁護士一人で独立しようとした場合、事務所の広さは15坪~ということになるでしょうか。
おおまかな話をすれば、1坪が約3.3平方メートルですから、15坪なら15×3.3で約49.5平方メートルです。
つまり約7メートル四方の部屋ということですが、法律事務所の場合はお客さんと話す会議スペースが必要ですし、自分の執務領域に加えてコピー機や本棚、事務員さん用の机なども必要ですから、実際にレイアウトを描いてみるとこれは結構ギリギリの広さのように思います。事務所を何年かやっていると、書籍や終結した案件の資料などが結構溜まってくるものですから、できれば書庫や倉庫的なスペースにも余裕を持たせておきたいところですね。
ただ実際には、その時点で空いているテナントの中で選ばなければなりませんから選択肢は有限ですし、なにより予算の問題があります。キッチンやトイレなど水まわりが共用なのか専用なのかによっても、実際に執務スペースとして使用可能な部分の広さは全く変わってくるでしょう。
結局こうした広さというものも目安に過ぎませんから、どこであれ自分が最終的に選んだテナントであれば気にせずともよいわけです。ちなみに私は、最初から大分広いテナントを借りてしまったため、開業初期はかなりガランとした状態でした。これはこれで、仕事を頑張って早くこの部屋を職員や勤務弁護士の机で一杯にせねばという気合が入るものでしたから、良い選択だったと思っております。
4月
07
2009
法律事務所では、文書の内容や配達の事実を後日の証拠とするため、文書を内容証明郵便で発送することがしばしばあります。
「内容証明郵便」とは、文書の内容や発送日などを郵便局(郵便事業株式会社)が証明してくれるサービスで、所定の書式で文書を作成して郵便局に持って行けば誰でも利用することができます。ただ、こういった従来の内容証明郵便は、大きな郵便局でないと取り扱っていませんし、「一行20文字以内、一ページ26行以内」といった厳重な書式制限があるほか、文書が2枚以上にわたる場合には契印を押さなければならない、同じ文書を計3通(相手への発送用・発送者の保管用、郵便局の保管用)作成して持っていく必要がある、発送用封筒を用意していく必要がある、書式チェックのため郵便局で長いこと待たされるなど、相当に手間が掛かるものです。
もし、うっかり「、」などをカウントしておらず1行の文字数をオーバーしていると受け付けてもらえませんし、郵便局に持っていく直前で誤字脱字を見つけたりすると、また最初から3通作り直しになってしまいます。
こうした手間のかかる内容証明郵便ですが、電子内容証明郵便システム(e内容証明)を使えば全ての手続きをネット経由で行うことができます。電子内容証明郵便システムを利用する場合は書式条件が緩和されており文字数などを特に気にすることなく文書作成できますし、料金もカードで決済可能、データを受信した郵便局側でプリントアウトから発送まで行ってくれるなど大幅な省力化が可能となりますから、便利な方法が導入されたなぁと思いながら利用しています。
ただ、電子内容証明郵便の発送を行っているのが現状では東京の郵便局1局だけであるため、発送状況が慢性的に混雑しているのは少し困ったことです。現在のところ特に深刻な問題は生じていませんが、データ送信から実際の発送まで20時間以上後ということもありますから、場合によっては郵便局まで走って従来の形式で発送した方が適切というケースもあるのかもしれませんね。
また、電子内容証明郵便作成ソフトの対応OSが、現在のところウィンドウズXPまでとなっており、VISTAに対応していないという問題も残されております。VISTAが登場して大分経つのですから、いいかげんに対応してほしいものだなあと思いつつ、電子内容証明郵便システムのバージョンアップを待つ日々となっているわけです。近日中に開業予定の方については、少し検討した方がよいポイントの一つではないでしょうか。
2月
03
2009
法律論や書面の書き方、またどういった証拠が必要かといった判断は、弁護士であれば当然できなくてはなりませんが、例えば登記簿や戸籍謄本などをどのように取得するのか、裁判所への書類の提出や保管金の納付や還付はどういう手順でするのか、といった実務的な事は、必ずしも弁護士が自ら行うわけではありません。したがって、いざ独立開業して仕事をしている自分の姿をイメージしようとした際、「実際の手続き上はどうなっているの?」という問題に直面する方もいらっしゃるでしょう。
既に運営システムが完成している法律事務所ほど、弁護士と事務方の業務が分業化されています。熟練の事務方は、特にあれこれ指示しなくてもスケジュール調整から必要書類の取り寄せ、経理など一通りやってくれるので非常に楽ですが、こうやって全てお任せ状態にしていると、事務所や事件がどう回っているか、本当の全体像が見えないままになってしまいます。
このような状況ですと、独立開業を思い立ったとしても、なかなか具体的なプランを描きづらいことになるのではないでしょうか。
一つの法律事務所が切り盛りされている現場には、経営の普遍的なヒントが数多く隠されているものです。勤務弁護士(イソ弁)として過ごしている際、事務方の仕事内容についても自分なりに理解しておくことは大変重要ですし、実際に独立開業した際の効率化されたマニュアル作成などにも繋がっていると感じています。
1月
21
2009
弁護士をはじめ、いわゆる「士業」と呼ばれる業種は、当初どこかの事務所に勤務して仕事を覚えていきながら、やがて独立して自力でお客さんを取って行くという展開がよく見られると思います。
一般の方からすると少しイメージが違うかもしれませんが、弁護士というものは結構職人的な業界で、親方のところに弟子入りして丁稚奉公しつつ、親方の技術を盗んで一人前になっていくような雰囲気があります。
勤務弁護士(イソ弁)時代に担当する事件の経験は、将来自分が独立開業するときの血肉となるものです。イソ弁生活をしていると、経営者弁護士(ボス弁)が次々と仕事を振ってきてコノヤロウと思ったりもするわけですが、依頼者のためだけでなく自分自身のためにも、おろそかにしてはならないものであるわけです。
開業といっても、何から手をつけたらいいのか見当がつかない、という場合もあるかもしれませんが、まずは勤務弁護士として今任されている案件について、どうすることが依頼者にとって最善なのかを考えて精一杯やることがプロとしての大前提です。そういった日々の努力のなかから、開業への心構えや、「ここは自分の事務所でも真似してみたい」「こうしたらより効率的になるのではないか」といった具体的な開業イメージも育っていくものだと思っています。
また開業イメージを具体化するためには、先に開業した先生の事務所を見せてもらうことも非常に有効だったと思います。私も開業を考え始めた頃、同期で開業した先生を飲みに誘い出して事務所見学をさせてもらったことがありました。あれこれ聞き出して迷惑だったかもしれませんが、テナントの坪数や各種備品のリース料金などが数値で出てくると、自分だけで考えていた頃よりもずっと具体的に開業までの段取りをイメージできるようになったことを覚えています。やはり持つべきものは良いお友達ということですね。