愛知県名古屋市の弁護士 交通事故・離婚など、お困りの際には名古屋駅前の法律相談をご利用下さい。

清水綜合法律事務所 Shimizu Law Office
清水綜合法律事務所 コラム

7月 03 2015

法律相談にかかる時間は?

案件の内容や、ご質問の数などにもよりますが、基本の相談枠は1時間です。

まず今回の状況をご本人様からお聞きして、これに対する一般的なご説明を行い、ご相談者様からのご質問と、これに対するご説明を行うという流れとなります。

最後に、今回の案件を仮に当事務所がお手伝いをする場合の費用についてもご説明します。

これらを合わせると、大体1時間程度になります。ご相談内容により、1時間以上の相談となる場合もありますが、特に法律相談の時間制限はありません。

なお法律相談終了後、そのまま正式ご依頼をいただく場合には、契約書の作成や資料のコピー、契約書内容のご説明や、今後の進行についてのご説明なども行いますから、1時間では終わらない場合もあります。

ある程度、弁護士へのご依頼を具体的にお考えの方については、お時間に余裕をもっていらしていただくことが良いかと思います。

カテゴリー:法律相談

7月 03 2015

弁護士への相談、初めてなので心配です。

当事務所へ法律相談を申し込まれる方々は、初めて弁護士に相談をされるという方ばかりです。

堅苦しい法律用語ではなく、分かりやすい表現を用いて、内容を十分ご理解いただけるような法律相談に努めておりますから、ご安心ください。

ご不明な点、ご心配な点などがございましたら、どんどんおっしゃってください。

カテゴリー:法律相談

6月 19 2013

成年後見人の指定方法は?(誰が成年後見人になるか)

「誰を成年後見人に選任するか」を決めるのは、裁判所です。
後見開始の申立をする方は、成年後見人の候補者として、自分自身を含めた特定の人物を推薦することができます。しかし推薦した希望通りになるかどうかは、諸事情を考慮して最終的には裁判所が決定することとなります。

このように、成年後見人が誰になるかは事前に確定することはできず、ご家族の立場からすると、少し不便に感じることもあるかも知れません。
確かに、例えば「実の父について、高齢による認知症が進行している」という状況で、近くに住んでいて、身の回りのお世話や介護をされてきたお子さんが成年後見人になれば、なにかと便利・安心であることは間違いないでしょう。

しかし、ご本人にお子さんが複数おり、お子さんの間にご本人の財産管理について対立が生じている場合、お子さんの1人を成年後見人とすることが、妥当なのかどうか? という点も考慮が必要です。
成年後見制度は、ご本人を保護・支援して、ご本人のために適切に財産管理をするための制度です。複数のお子さんの間でご本人の財産管理について対立が生じている状況で、お子さんの1人が成年後見人になったとしても、ご本人の財産管理業務が円滑に進むことは期待できず、結果的にご本人が不利益を被ってしまうと思われるためです。

このように、関係者間でご本人の財産管理について対立が生じている場合には、専門的知識を有し、職務として公正に後見業務を行うことができる第三者として、地域の弁護士などを裁判所が選任することは、一般的によくみられます。成年後見人の選任に際しては、ご本人に近い親族の皆さんに対して、その候補者が成年後見人に就任することの賛否を問う手続がありますから、親族の皆さんの回答によっても、判断は変わってくるでしょう。

なお、誰が成年後見人になるかという問題は、成年後見人の報酬についても影響してくるため、こちらも念頭に置いておく必要があります。成年後見人に対する報酬は、成年後見人から裁判所に対する申立てがあったときに審判で決定されます。
ご本人(成年「被」後見人)のご親族が成年後見人に就任した場合、報酬の申立が行われない場合も多いかと思いますが、弁護士などの専門家が成年後見人に選任された場合、案件や後見業務の内容にもよるものの、一般的に月々2万円~3万円程度の報酬が発生します。

このように、申立側の希望通りに全て進むわけではありませんから、事前にある程度の見通しや、準備をしておくことが、成年後見人選任をスムーズに進めるために大切な事かと思います。
こうしたお困り事は、個別事案ごとの事情によって内容も変わってまいりますから、法律相談の際に弁護士がご事情を詳しくお聞きした上で、アドバイスやご説明を差し上げます。
「成年後見人をつけたい」というご希望の方は、まず当事務所の法律相談をお申込下さい。

6月 17 2013

成年後見人の業務

一旦選任された成年後見人は、当面問題となっている「特定の業務」が終われば業務終了というものではありません。たとえば、成年後見人が選任された時点で遺産分割や裁判、相続放棄の問題などを解決する必要があった場合、それらの問題が解決したとしても、成年後見人はご本人の財産を適切に管理することでご本人を保護・支援するために選任されたのであって、保護・支援の必要がある以上、成年後見人の職務が終了するわけではないのです。
原則的に成年後見人の職務は、本人の判断能力が回復するなど、その必要がなくなった場合あるいは、本人が死亡するまで継続します。成年後見人を辞任するためには、家庭裁判所の許可が必要で、自由に辞任できるものではありません。

このように成年後見人は、あまり気軽に引き受けるという業務ではありませんから、この点は一応注意しておいてください。
ご親族であったとしても、長期間責任を持って業務を続行し、定期的に裁判所への報告を行うという後見業務の具体的内容について不安があるという場合、最初から弁護士などの専門家に後見業務を任せることが適切な場合もあるかと思います。

成年後見人を誰にするかの判断は、諸般の事情を考慮して裁判所が決定することではありますが、成年後見人の「候補者」として、親族の方が立候補すること自体は可能となっていますから、こうした点も念頭の上で、どのような内容で成年後見開始の申立をするかを十分検討していただければと思います。

当事務所では、成年後見人の選任の申立に関するお手伝いも行っております。
個別のご事業を弁護士がお聞きした上で、考え得る選択肢や注意事項などについてご説明を差し上げておりますので、まずは法律相談をお申込ください。

12月 07 2012

離婚と裁判、弁護士の役割

先日とある芸能人の離婚判決が出て大きく報道されましたが、結局は判決確定前に取り下げられ、協議離婚として終了したようですね。
今回の件を見てもよく分かるとおり、離婚というものは夫婦の一方がどれほど「離婚したい」と願っても、もう一方が離婚に同意してくれなければ、簡単には離婚することができないものです。離婚についてのご相談が当事務所にも日々寄せられておりますので、あらためて離婚や離婚裁判について少しご紹介してみましょう。

■協議離婚・調停離婚・審判離婚
離婚というものは、夫婦がきちんと合意すれば、所定要件を備えた離婚届の届出によって成立します(協議離婚)。ところが夫婦のいずれかが離婚に同意しなかったり、離婚の際の条件面で折り合わないような場合には、協議離婚することができません。こうした場合、離婚裁判によって裁判所に離婚を認めてもらわなければなりませんが、わが国では調停前置主義が取られているため、離婚裁判をする前にまず調停をしなればなりません。
調停というのは、家庭裁判所の一室で、調停委員や裁判官を交えた話し合いをすることです。調停では、第三者の意見を交えた裁判所での話し合いですから、ある程度冷静な判断が期待できます。調停の中で離婚自体や離婚条件の調整についての合意ができた場合、調停により離婚が成立します。調停離婚が成立しなかった場合でも、審判によることが相当であると判断されるケースでは、調停に代わる審判(審判離婚)がなされる場合もあります。

■離婚原因があるかどうか
調停による離婚が不調(不成立)となり、それでも夫婦の一方が離婚することを望む場合には、今回の芸能報道で見られたような、離婚裁判を起こすことになります。
離婚することができる理由は民法に5つ定められており、この5つのいずれかに該当することを主張立証しなければ、離婚は認められません。法定の離婚事由とは以下のようなものです。

民法770条1項
1号:配偶者の不貞行為
2号:配偶者による悪意の遺棄
3号:配偶者の3年以上の生死不明
4号:配偶者の、回復の見込みのない強度の精神病
5号:その他、婚姻を継続しがたい重大な事由

1号や3号は比較的、該当の有無が判断しやすいですね。ただ、離婚に関するお困りの声を実際にお聞きしていると、離婚したい原因として最も多いのは「性格の不一致」というものであるように思います。これは5号に該当するかどうかという問題です。
今回報道されたケースも、1号~4号ではなく、5号の該当性が正面から争われていました。どの程度の行為が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか、まさにケースバイケースの判断となりますから、事前の見通しが非常に読みづらいものであったと思います。

なお今回報道されたケースでは、第一審で離婚を認める判決が出たため、妻側が控訴して引き続き争う可能性も考えられましたが、結局は夫の側が裁判を取り下げて、協議離婚が成立するというやや予想外の結末になったことはご存知の通りです。おそらく双方、これ以上裁判を続けることのメリットがないと判断し、裁判外での交渉が新たに成立したのでしょう。双方ともにまだ若く子もないですから、このような終わり方は、ある意味きれいに終わった形ともいえます。

当事務所に寄せられる離婚のご相談では、離婚問題から派生して、子の親権や養育費、子との面接調整、年金分割、残された不動産や住宅ローンの問題など、周辺問題へ広く波及しているケースも見られます。
ただでさえ感情的になったり、利害関係が生じている状況下で、双方が冷静に話し合いを進めて一つ一つの問題を解決することは、不可能ではないものの、肉体的にも精神的にもかなりの重労働であることは事実でしょう。
当事務所でも、こうした離婚本体の問題と周辺の問題の解決について年単位で取り組むことがあります。大変、負担や責任の重い業務となりますが、ご本人がお一人でこれらの問題解決に取り組むときのことを思うと、こうした分野こそ、専門家である弁護士の役割が非常に大きな意味を持ってくるものであると思います。

カテゴリー:離婚

11月 19 2012

未払の代金を請求したい

納品した商品の代金を払ってもらえないというトラブルが、しばしばご相談として寄せられます。弁護士が交渉や裁判を行い、無事回収に成功する件もありますが、なかなかうまく回収できない案件もあります。こうした代金支払請求がうまくいかない理由、うまくいく場合の展開などを簡単に整理してみましょう。

まず基本的な問題ですが、まともな会社・相手であれば、本来支払う払うべき代金や賃料はきちんと払ってくるものです。したがって「未払が生じている」という状況自体が、はっきり言えば既に、相当非常識な状態と言わざるを得ません。こうした相手に代金をきちんと支払わせることが簡単でないのは、弁護士がついた場合であっても大きくは変わりません。
また、弁護士に回収を依頼するにしても、裁判などの手段に出るにしても、一定の費用や実費が必要となってきます。代金満額の回収に成功しても、トータルで見て赤字では意味がありませんから、全体の請求金額が少ない場合、弁護士へのご依頼をお勧めしづらい状態になる場合があります。
また、相手の経営状態が悪化してキャッシュが無い状況になっていると、「ない所からは取れない」という展開になることがあります。消費者金融から過払い金を回収する場合でも同様の展開になることがありますが、経営が傾いた会社を相手に裁判を起こし、預金口座を差し押さえても、結局たいした金額も入っていなかったということがあるのです。
こちらも最大限努力して回収しますが、あくまで法的な手段に沿った回収であり、相手の会社に押し掛けていって家探しするわけではないので、手段にも限度というものがあることは予めご理解いただければと思います。

何だか悪い展開の話ばかりをご紹介してしまいましたが、代金回収にはこうした側面が実際ありますから、基本的には「前のツケが払われていない相手とは取引しない」「法的な措置を取るならば、相手の経営状態が悪化する前に動く」といった防衛的な姿勢が大変重要かと覆います。相手の経営状態がまだ何とかなる状態であれば、「うるさい相手には仕方ないので払う」ということもありますし、預金口座を差し押さえてやると、驚いて連絡をしてくるということもあるでしょうから、早めの対策が大変重要です。
もちろん、このままでは我慢できない、どうにかして少しでも回収したいというご希望であれば、当事務所としても積極的にお手伝いをさせていただきますから、まずはお話を詳しく聞かせてください。

当事務所では会社や個人事業主の自己破産を多く扱っていますが、「取引先からの代金支払が滞った結果、経営状況が致命的に悪化する」というケースが実際に見られます。本来払ってもらえるはずの代金が払われないために会社が倒産、ということではあまりにも無念です。

弁護士に依頼して取引先に請求をする、というと何やら大事にしてしまう印象で、消極的なお気持ちになるかもしれませんが、まずご自身の生活や、ご自身の事業を守ることを考えてください。弁護士が請求していく際のニュアンスや手段の強弱なども、状況に応じてもちろん対応可能です。手遅れになってしまう前の選択肢の一つとして早め早めに検討していただければと思います。

6月 03 2011

交通事故の弁護士費用

弁護士費用について、「何となく心配」という方が少なくないようです。

案件によって難易度や見通しも異なりますから一概には言えませんが、交通事故の損害賠償請求をお手伝いする場合、当事務所では「着手金」(ご依頼時に必要となる弁護士費用)は10万円程度の件が多いかと思います。

 

「着手金」以外に必要となる弁護士費用は「成功報酬」ですが、これは文字どおり完全な成果報酬型となっており、「実際に増額成功した額」に対する何%という方式で計算されます。

具体例に考えてみますと、弁護士にご依頼される前に加害者側が提示してきていた示談金が1000万円で、弁護士のお手伝いによって最終的に1500万円獲得した場合には、当初提示額との差額500万円が業務の成果ということになります。仮に成功報酬が獲得額の8%(税別)である場合、成果である500万円の8%(+消費税5%)の42万円が成功報酬ということになります。( 当事務所の解決事例 )

※事前に示談金額の提示が無いケースの場合、成功報酬は実際の「獲得額」に対する何%という方式になります。

 

成功報酬の割合をどの程度とするかはケースバイケースですが、当事務所では業務成果の数%~20%程度の範囲内であることが多いかと思います。どのようなケースでも、成功報酬の割合はご依頼時に作成する契約書に明記されますから、あとで不明確な報酬が発生することはありませんのでご安心下さい。

 

このように、当事務所では「着手金」「成功報酬」以外の弁護士費用は通常生じません。

たとえば、東海3県や静岡県程度の範囲であれば、裁判の期日に出廷する場合でも、弁護士の日当などは頂いておりません。交通事故の場合、「交通事故の発生地点」や、「被害者の住所地」が裁判管轄の一つになりますから、損害賠償請求の裁判を起こす場合でも、被害者の方がお住まいの地域に近い場所で進められることが多く、当事務所では遠方の裁判所へ行かなければならないようなケースは今のところ無いという状況になっております。

 

弁護士費用と別に必要となるのが「実費」です。これは通信費や交通費など、業務の処理に必要な支出で、依頼者様のご負担となります。実費の額は案件の内容によって大きく変わってきますが、例えば交通事故の損害賠償請求が交渉で解決したような場合であれば、業務処理に必要となる実費は、切手代や振込手数料など、比較的少額となることが多いかと思います。

交渉段階で賠償金の支払額が折り合わず、裁判を起こす場合には、少し実費の額が増えてきます。裁判を起こす場合、まず訴状に貼る収入印紙代が必要です。収入印紙代は、原告が被告に請求する金額が上がるにつれて高くなりますが、例えば100万円の請求をする場合の収入印紙代は1万円、1000万円の請求であれば5万円、1億円の請求であれば32万円です。あまり無理な請求を立てても印紙代がかかるだけですから、どの程度獲得できる見込みがありそうか、十分検討の上で訴額を設定する必要があるでしょう。

このほか裁判をする場合の実費としては、裁判所に納める切手代(6000円~7000円程度)、弁護士が裁判所に出廷する際の交通費などが一般的です。

 

以上のように、交通事故の損害賠償請求を当事務所にご依頼される場合必要となる出費は「着手金」と「実費」、増額に成功した場合の「成功報酬」となります。着手金の額と成功報酬の計算方法は契約書に明記され、実費支出の内容についても業務終了時に明細書をお渡ししますから、不明確な支出、事前に説明のない弁護士費用などが生じることのないようになっております。

 

交通事故被害というのはそれぞれ異なったポイントがあり、賠償金を必ず増額できるという性質のものではありませんが、当事務所のホームページにて具体的に増額成功した解決実績をご紹介しておりますので、そうした事例についても参考の一つとしてご検討頂ければと思います。ご依頼される方々のリハビリや治療など、適正な賠償金額を獲得することは生活再建のために大変重要ですから、当事務所としても交渉や裁判において十分な主張立証を尽くしてまいります。

詳細については法律相談の際に弁護士からご説明いたしますので、まずは法律相談をお申し込み下さい。

カテゴリー:交通事故

4月 28 2011

強制執行・差し押さえと給料債権

「強制執行」「差し押さえ」というと、自宅まで執行官がやってきて家財を押さえられてしまう情景をイメージされるかもしれませんが、実際は預金口座や給料の差押えの方がよく見られるケースかと思います。

貸金や慰謝料、養育費、損害賠償金などを支払う債務があり、判決正本や和解調書、調停調書などが作成されている場合、支払が滞れば債権者の強制執行が可能となります。分割返済の約束を守れずに「期限の利益」を喪失してしまえば、支払うべき全額を一度に差し押さえられる状態になってしまう場合もあるのです。

今回は、ある日突然、職場に裁判所から差押決定が届いた場合どうなるか、というお話をしたいと思います。

 

1 給料の強制執行・差押えとは?

給料差し押さえは、債権執行の一種です。

 ・A→B   
※請求権は、Aの「貸金」「損害賠償」「慰謝料」「養育費」などの請求権

・B→C(CはBの雇用主)  
※請求権は、Bの賃金請求権

 このように2つの請求権が成り立っている状態で、ABCを1本に連結してみると、以下のようになります。(Aから見た関係)

A(債権者)→B(債務者)→C(第三債務者)

給料の強制執行・差し押さえというのは、AがBに対する請求権(慰謝料や養育費、貸金債権など)を回収するため、Bの雇用主であるCを第三債務者として、BのCに対する賃金請求権を差し押さえるという図式です。

 

2 強制執行・差し押さえの対象

強制執行・差し押さえの対象は、給料債権に限定されるものではありません。可能であれば債務者の預金口座などを差し押さえた方が、一度に回収できる額はより大きくなる場合もあるでしょう。

ただ、債務者の預金口座が不明であったり、預金口座の残高があまり残っていないと予想される場合であれば、債務者の給料債権を差し押さえ、毎月少しずつでも回収していくという手段を検討しなければならない場合があります。

 

3 給料に対する強制執行・差し押さえの範囲

給料の全額が差し押さえられてしまうと、差し押さえをされた債務者が生活できなくなってしまいますから、債務者の給料を全て差し押さえるということはできません。

差押えが可能な範囲は、給料(基本給や諸手当。通勤手当を除きます)から所得税・住民税・社会保険料を控除した残額の、4分の1までです。

※給料から所得税・住民税・社会保険料を引いた残額が月44万円を超えるときは、その残額から33万円を控除した金額になります。

 <大まかに計算した場合の一例>

①月ごとの総支給額:25万円
②天引き月額合計:5万円
③本来の手取り月額:20万円
④差し押さえ可能な月額:5万円(③の4分の1)
⑤差し押さえ後の手取り月額:15万円(③-④)

 給料の総支給額が25万円、税金・社会保険料の控除額を、大まかに考えて合計で5万円と考えると、本人の手取り月額が20万円となります。月給から差し押さえによって月々回収することができるのは、この4分の1までですから、このケースでは月5万円までとなります。

上の例では月額5万円が差し押さえられた結果、債務者が得る手取り月額は20万円から15万円となり、差し押さえられた月額5万円は債務者の勤務先である第三債務者(C)が、債権者(A)に直接支払うことになります。

なお、給料に対する強制執行・差し押さえにおいては、月々の給料だけでなく、ボーナス(賞与)や退職金も執行対象とすることが可能です。

 

 4 給料の強制執行・差し押さえのメリット・デメリット

給料差し押さえのメリットは、職場さえ分かっていれば差し押さえが可能であることです。債務者の利用している銀行名までは不明ということも多いかと思いますが、勤務先程度であれば判明している場合も少なくないでしょう。

デメリットは、債務者に退職・転職などをされてしまうと、次の職場まで差し押さえが追いかけていく訳ではないので、そこで回収がストップしてしまうことです。また差し押さえを実行したことによって、債務者が現在の職場を退職してしまうという危険性も否定はできません。

 

5 差し押さえされる側から見た場合

給料に強制執行されると、裁判所から職場に差押命令が送達されますから、その段階で職場も驚き、一体どうしたのかという事になります。

差し押さえされた月々の給料は、債務者の勤務する職場(第三債務者)が債権者に対して支払っていくことになります。こうなると、債務総額にもよりますが数ヶ月間から数年間という期間、債務者の職場が給料支払とは別の計算を行い、振込や供託などを続けていくことになるわけですから、勤務先の事務的な負担も無視できないものになってきます。

いずれにしろ、債務者やその職場にとってもあまり望ましい事態とはいえませんから、債務を負っている方はこうしたことにならないよう、約束通りの支払いをきちんと実施することが大変望ましいといえます。

 

6 まとめ

給料の差し押さえは、毎月の回収額がそれほど多くならず、満額回収までに長期間必要となってしまうケースが多いこと、退職などのリスクに対応できないことなどから、回収方法として積極的にお勧めするほど効果的な手段ではありません。ただ、実際上は給料しか回収対象が見あたらないというケースもありますから、そうした場合には一般的な金融機関でも、当事務所でご依頼を頂いた業務の中でも、給料を対象とした強制執行・差し押さえを行うこと自体は一般的に行われていることかと思います。

「請求される側」の場合は、こうした給料差し押さえに至らないようなアドバイスをまず差し上げておりますし、「請求する側」の場合は、給料差し押さえによるメリットとデメリットを十分ご理解頂いた上で、業務を進めております。

最初から差し押さえを前提とした法律相談、というケースはあまりないかと思いますが、何らかの金銭的請求をお手伝いする中で、強制執行・差し押さえについてのご説明が必要となる場合もありますので、そうした場合は弁護士から詳しくご説明を差し上げております。

2月 22 2011

遺産の預金を払い戻したい②

銀行預金は、遺産を構成する基本的な項目の一つです。

遺産の分割方法について、法定相続人間で折り合いがつかない場合には、家庭裁判所での遺産分割調停という手段もなかなか便利ですよ、というお話を以前に書きました。(「遺産分割調停とは?」)。
調停において、預金の分割方法も含めて相続人全員の意見が折り合えば、その合意内容通りに裁判所が調停調書を作成しますから、その調停調書を金融機関に持っていけば、有効な遺産分割協議書を提出した場合と同様に、預金の払戻手続を進めることができます。

では、調停を何回やっても、最後まで相続人間の意見が折り合わなかった場合はどうなるでしょうか。

遺産分割調停が不成立となった場合、最終的には裁判所が審判によって強制的に遺産の分割を実施します。不動産や証券などの遺産は、裁判所が各種の事情を考慮して、誰に何を相続させるかということまで取り決めますが、ここで預金と他の相続財産は扱いが異なってきます。

預金(の払戻請求権)が複数の相続人に相続された場合について判例は、一貫して当然分割説に立っています(東地H8.2.23等)。これは特段の遺産分割手続を経ず、各相続人が当然に、法定相続分に応じた預金払戻請求権を分割取得するという立場です。
例えば、被相続人が父で100万円の預金があった場合、その妻と子2人は法定相続分に従って、妻が50万円、子が1人あたり25万円ずつの預金払戻請求権を、銀行に対して当然に有しているという考え方です。

このように、預金払戻請求権は当然に分割されているというのが裁判所の基本的な立場ですから、相続人間でどうやっても預金の分割方針に折り合いがつかない場合、調停や審判など、家庭裁判所の遺産分割手続を利用した払戻は、原則的には出来ないと考えることになります。

一方、銀行などの金融機関は法定相続人全員の実印をついた遺産分割協議書など所定の書類がなければ、一部の相続人による払戻請求には応じないことが一般的ですから、相続財産のうち預金だけが塩漬けになってしまう可能性もあるのです。

こうした場合にどうするかですが、ともかく預金払戻手続という部分だけでも、相続人が全員協力して進めることができれば一番よいと思います。ただ実際には、払い戻された現金を前にまた紛争が再燃してしまう危険もありますから、相続人間で最後まで話をまとめることはハードルが高いかもしれません。

次に、各相続人が裁判によって、自らの法定相続分に応じた払戻を金融機関に対して請求していくといいう手段があります(コラム「遺産の預金を払い戻したい」参照)。この方法は他の相続人と関係なく進められるほか、弁護士が代理人として全ての手続を行うことが可能ですから、ご本人のストレスなども少なく済むのが利点です。

相続財産の基本的な内容の一つでありながら、このように預金は他の遺産と扱いが異なる部分がありますから、ご留意頂ければと思います。

カテゴリー:相続・遺言

1月 05 2011

差し押さえと債務名義

多重債務や慰謝料など、相手に金銭を支払うべき立場の方からご相談を受けた際に、「相手から差押をされたりしないか」というご心配をされる方がみられます。

 結論から言うと、単にお金を借りていたり、損害賠償債務があるというだけで、ある日突然に銀行口座や職場の給料が差押される、といったことはありません。差押をするには、裁判所を通じたそれなりの手続が必要です。
なお差押といっても、その対象は債権、動産、不動産と様々ですが、一般の方が比較的関わる可能性の高いものは債権の差押と思われますので、債権執行手続の流れを簡単に説明してみましょう。

 

基本的な債権差押の場面では、当事者が以下のように3人出てきます。
A:債権者(支払ってもらう権利のある人)
B:債務者(支払う義務のある人)
C:第三債務者(Bに支払い義務のある人

【A→B】という請求を実現するために、Aが【B→C】という請求権を取り立てるというイメージです。Cというのは、たとえば「Bの勤務する会社」(BがCに給料債権を持ちます)や、「Bの預金を預かっている銀行」(BがCに預金払戻請求権を持ちます)などです。

差押を裁判所に申し立てるには、まず「債務名義」というものが必要となります。
債務名義には色々な種類がありますが、たとえば確定した判決正本、裁判上の和解が成立した場合や調停が成立した場合に、裁判所が作成する調書の正本、公証人役場で作成した公正証書正本、仮執行宣言付支払督促などです。この例を見ても分かるように、債務名義というのは裁判所や公証人役場などの公的な機関で作成された文書です。一般の方が相手方と合意の元に作成した示談書や和解書などを、そのまま債務名義として差押に用いることはできませんので区別してください。

債権者Aが債務名義を得て裁判所に「債権差押命令申立」を行うと、裁判所から「債権差押命令」が出され、AやBだけでなく、第三債務者であるCにも差押命令の正本が裁判所から送達されます。債務者Bへの送達が完了した日から1週間が経過するとAに取り立て権が生じるので、AはCから直接支払を受けられるようになります。これが債権差押手続の簡単な流れです。

 

なお債務名義が既にあるケースであれば、差押申立の準備に取り掛かってから、債権差押命令が出て直接取り立てが可能になるまでの時間は、それほど長いものではありません(早ければ3週間程度のこともあります)。差押をされてしまうと、預金口座の残高が減って予定していた引落ができなかったり、会社に差押が知られてしまったりといったトラブルもあり得ます。相手が債務名義を持っているようなケースでは、支払いを怠ると、冒頭に書いたような「ある日突然差し押さえが」という展開も現実的なものとなってきますから、債務名義で定められた金員の支払を怠ることがないよう十分注意すべきでしょう。

クレジットカードの支払いが滞っており、裁判所から呼び出しが来ているのに放置してしまったような方が結構みられますが、そのまま判決が言渡されたり、支払督促に仮執行宣言が付されることで差押が可能となってしまいますから、ともかく放置せずに対処されることをお勧めしています。

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